
(1)民泊新法のポイント
まずは、「民泊新法」が「旅館業法」「特区民泊」と大きく異なるポイントを比較してみたいと思います。
①あくまでも「住宅」が対象
民泊新法で対象となるのは「住宅」です。このため、ホテルや旅館が営業できない住居専用地域で営業ができるというメリットがあります。
ここで、民泊新法で対象となる「住宅」について確認していきましょう。
住宅宿泊事業を実施することができる「住宅」は、[1] 設備要件と[2] 居住要件を満たしていることが必要とされています。
[1] 設置要件とは、「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」の4つの設備が備えられていることです。
これは必ずしも1棟の建物内に設けられている必要なく、同一の敷地内の建物や各建物に設けられた設備が使用可能な状態であれば可とされています。ただし、届出住宅に設置されているものではなく、近隣の公衆浴場や公衆トイレ等で代替することはできません。
[2] 居住要件とは、以下3つの条件のいずれかに該当するものとされます。
- [1] 現に人の生活の本拠として使用されている家屋➡短期的ではなく、継続して生活が営まれていること
- [2] 入居者の募集が行われている家屋➡分譲または賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われていること
- [3] 随時所有者などの居住の用に供されている家屋➡別荘やセカンドハウスなど、生活の本拠としては使用されていないが、その所有者等により随時居住利用されているもの(少なくとも年1回以上は使用している家屋であり、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは、これに該当しません。)
以上、[1] 設備要件と[2] 居住要件を満たしている物件であれば、一戸建ての物件はもちろん、共同住宅であるマンションやアパートを利用することも可能です。
ただし、マンションの管理規約で民泊が禁止されていたら、民泊営業を行うことはできません。マンションで民泊を始めたい場合は、必ずこのマンション規約を確認しましょう。
参考:「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」
②申請手続きが易しい
- ・民泊新法・・・都道府県へ届出(都庁・県庁や保健所への届出)
- ・旅館業法・・・都道府県の許可
- ・特区民泊・・・都道府県の認定
「合法民泊の中で最も手続きが易しいのは民泊新法」と言われる理由は、この申請方法にあります。「届出」とは義務としてその事実を知らせることであり、民泊新法は住宅宿泊事業の「届出」を行うことで民泊運営が可能です。
それに対して、旅館業法の「許可」とは、法令によって禁止されている行為を、特定の場合・人・場所などについて合法化することです。本来は禁止されている行為に対して「許可」をもらうという考え方なので、民泊新法の届出や、特区民泊の認定に比べて、旅館業法の「許可」の方が高いハードルであることをご理解いただけると思います。
特区民泊の「認定」とは、公の機関がある事項の事実の確認を行うことです。特区民泊では所定の申請書及び添付書類を、施設の所在地を管轄する都道府県知事に提出しなければなりません。ここで、物件要件を満たしているか、法令を遵守した営業が可能な環境を整えてあるか、等の審査を受けます。審査をクリアし、「特定認定」を受けると、晴れて民泊を営むことができます
これらの申請の難易度をまとめると、旅館業法の許可>特区民泊の認定>民泊新法の届出という順番になります。もちろん、一番易しい方法と思われる民泊新法の届出においても、届出書と一緒に様々な添付書類が必要です。どの方法を取る場合も、責任を持って正しい手続きを行いましょう。
③年間営業日数の上限は180日
- ・民泊新法・・・1住宅あたり年間180日以内
- ・旅館業法・・・制限なし
- ・特区民泊・・・制限なし
民泊新法では180日までしか営業ができない点にも注意が必要です。民泊以外の活用方法がなければ、ビジネスや投資としては厳しいという意見も少なくありません。各自治体の条例で民泊営業ができる地域や期間をさらに規制している場合もあるため、民泊開業をする場合は必ずお住まいの自治体にご確認が必要です。
それに対して、旅館業法と特区民泊では年間営業日数の制限はありません。これから民泊を始められる方は、まずは民泊新法で開業をするのがよいでしょう。年間営業日が180日を超えるような場合や、民泊運営で利益を上げることを考えている場合であれば、年間営業日数の制限を受けない旅館業法・特区民泊を検討しても良いでしょう。
④最低宿泊日数の違い
- ・民泊新法・・・制限なし
- ・旅館業法・・・制限なし
- ・特区民泊・・・2泊3日以上
民泊新法、旅館業法は最低宿泊日数の制限がありません。一方、特区民泊の場合には最低宿泊日数が2泊3日以上と定められています。特区民泊では1泊のみといった単発的な宿泊は受け付けられませんので注意しましょう。
なお、この特区民泊の最低宿泊日数について、従来は6泊7日以上と定められていたものが2泊3日以上にまで緩和された経緯があります。特区民泊が可能な区域でも、各自治体によって条例が定められていますので、特区民泊を諦める前に一度ご自身が保有する物件がある区域の条例を確認してみましょう。
⑤消防設備等の設置
- ・民泊新法・・・原則要(一定条件下で不要)
- ・旅館業法・・・必要
- ・特区民泊・・・必要
自動火災報知器などの消防設備の設置は、民泊新法・旅館業法・特区民泊のどの場合においても必要です。
ただし、民泊新法では家主同居で宿泊室の面積が小さい場合には不要とされています。
消防設備は通常の住宅などには設置されていないケースが多く、一戸建てや比較的小規模なマンションなどの共同住宅を利用して民泊運営を行う場合、民泊のために新たに消防設備の設置が必要となる可能性が非常に高いです。
民泊新法では消防設備を簡易的に済ませられるケースもあります。民泊新法の消防設備については以下で詳しく説明していますので併せてご確認ください。
⑥不在時の管理業者への委託業務
- ・民泊新法・・・規定あり
- ・旅館業法・・・規定なし
- ・特区民泊・・・規定なし
民泊新法では「原則、住宅宿泊事業者は住宅宿泊管理業者に管理業務を委託する」という義務が定められています。これは旅館業法と特区民泊にはない、民泊新法の大きな特徴の1つです。
合法民泊の中でも比較的易しい手続きで可能な民泊新法ですが、住宅宿泊事業者だけで民泊運営を行えるわけではなく、管理業務の委託が必要であるということを忘れないようにしましょう。但し、住宅宿泊事業者が自ら管理業務を行い、管理業務の委託をしなくても良いケースもあります。
⑦無申請での営業はペナルティも
民泊新法では届出を怠るなど法令に違反すると業務停止命令や事業廃止命令を受けます。従わない場合は6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金とペナルティが科されることも。申請は必ず行うようにしましょう。
(2)住宅宿泊事業者とは
「住宅宿泊事業者」というのは、民泊の事業者のことです。つまり、あなたが自分の住んでいる家の一部を民泊をして貸し出そうと届出をする場合、あなたが「住宅宿泊事業者」となります。
民泊新法では、制度の一体的かつ円滑な執行を確保するため、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3つのプレーヤーが位置付けられており、それぞれに対して役割や義務等が決められています。
・「住宅宿泊事業者」
⇒ 住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をして、住宅宿泊事業を営む者
例)民泊ホスト
・「住宅宿泊管理業者」
⇒ 住宅宿泊事業法第22条第1項の登録を受けて、住宅宿泊管理業を営む者
例)家主不在型の民泊ホストから委託を受けて、住宅宿泊管理業(衛生確保、苦情対応、騒音防止のための説明など)を行う管理会社・民泊代行会社
・「住宅宿泊仲介業者」
⇒ 住宅宿泊事業法第46条第1項の登録を受けて、住宅宿泊仲介業を営む者
例)民泊仲介サイト運営会社(Airbnbなど)

(3)「家主居住型」と「家主不在型」
(3)-1「家主居住型」と「家主不在型」の定義
住宅宿泊事業には「家主居住型」と「家主不在型」の2つのタイプがあり、いずれかによって住宅宿泊事業者に対する規制が異なります。
「家主居住型」は、届出住宅(民泊施設)にお客さんが泊っている間は、住宅宿泊事業者であるあなたが、その住宅に住んで(また滞在して)いる必要があります。例えば、あなたが届出住宅の隣に住んでいるような場合や、住宅宿泊事業者以外の人(あなた以外の人)が居住している場合などは、家主居住型の「住宅宿泊事業者が居住」の要件は満たさず、「家主不在型」ので注意してください。
「家主不在型」は、簡単に言うと、ゲストが宿泊中にあなたが「不在となるとき」がある場合です。
それでは、民泊に必要な日用品を買うために少しだけ外出をするような場合があると、「家主不在型」になるのか?というと、そうではありません。厳密にいうと、国土交通省令・厚生労働省令で「一時的な不在」と定められているケースに該当する場合は、「家主不在型」になりません。
「一時的な不在」とは、「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在」と定められています。さらに「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間」とは、「届出住宅が所在する地域の事情等を勘案する必要があるため、一概に定めることは適当ではないが、原則1時間とする。ただし、生活必需品を購入するための最寄り店舗の位置や交通手段の状況等により当該行為が長時間にわたることが想定される場合には、2時間程度までの範囲とする」、と定義されています。
つまり、原則1時間、特別な事情がある場合でも2時間程度の範囲までの不在であれば、「一時的な不在」として認められ、「家主居住型」の条件をクリアしています。
「家主居住型」、「家主不在型」まとめ
- 「家主居住型」 居住住宅に居住して、原則1時間(特別な事情がある場合でも2時間程度の範囲まで)の不在をしない
- 「家主居住型」家主居住型の条件を満たせない場合
(3)-2「家主居住型」と「家主不在型」の管理の違い
「家主居住型」と「家主不在型」では管理の仕方に違いがあります。それは「家主不在型」の場合は、管理業務を住宅宿泊管理事業者に委託しなければいけない、という点です。
民泊新法においては、住宅宿泊事業の適切な実施を守るため、基本的に住宅宿泊事業者である民泊ホストは住宅宿泊管理業者に施設管理業務を委託する必要があります。ただし自分自身が住宅宿泊管理業者登録をして管理業務をおこなうことは可能です。
これから民泊を始められる方は、まず自身のお部屋が「家主居住型」、「家主不在型」のどちらになるか確認しましょう。「家主不在型」になる場合には、自分自身で管理するか、それができない場合は住宅宿泊管理事業者に管理業務を委託するようにしましょう。
「家主不在型」の場合の管理
- 管理業務を住宅宿泊管理事業者に委託する必要がある
- 自分自身が住宅宿泊管理業者登録をして管理業務を行うことは可能
(4)宿泊者の安全の確保
住宅宿泊事業者は、宿泊者の安全の確保を図るため、届出住宅に以下の措置を講じる必要があります。
[1] 非常用照明器具の設置
[2] 避難経路の表示
[3] 火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置
[1]非常用照明器具の設置と、[3]火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置については、「平成29年国土交通省告示第1109号」において規定されております。宿泊者の安全の確保を図るための措置を講じるにあたっては、「民泊の安全措置の手引き」及び「住宅宿泊事業における安全確保のための措置に関するQ&A」をご確認ください。
[1]非常用照明器具の設置について
届出住宅の建て方や規模等に応じた安全措置の適用については下表のとおりとなっています。
家主居住型で宿泊室の床面積が50m2以下の場合は以下のように特定部分の安全措置が不要になります。(「宿泊室の床面積」とは、宿泊者が就寝するために使用する室(寝室)の床面積で、「居室の床面積」ではないので注意してください。また、「宿泊室の床面積」には、宿泊室内の押し入れや床の間の面積は含まれません。)
(表)届出住宅の建て方と規模等に応じた安全措置の適用要否
|
安全措置の内容 |
届出住宅の建て方と規模等 |
|||
|---|---|---|---|---|
|
一戸建ての住宅、長屋 |
共同住宅、寄宿舎 |
|||
|
家主同居※1で宿泊室の床面積が50m2以下 |
左記以外 |
家主同居※1で宿泊室の床面積が50m2以下 |
左記以外 |
|
|
非常用照明器具 |
✕ |
○ |
✕ |
○ |
|
防火の区画等 |
✕ |
○ |
✕ |
○ |
|
その他の安全措置(第二第二号イ~ホ) |
○※2 |
✕ |
||
○:適用あり(原則措置が必要) ×:適用なし(特段の措置不要)
※1 届出住宅に住宅宿泊事業者が居住しており、不在とならない場合を指します。(ここでは届出住宅に居住していることが必要であり、委託が必要な場合の不在とは異なりますのでご留意下さい。)
※2 宿泊者の使用に供する部分等の床面積や階数が一定以下である届出住宅の場合は不要となります。
[2]避難経路の表示
「避難経路」の表示にあたっては、市町村の火災予防条例により規制される地域もあることから、当該条例の規制内容を確認し、規定された事項を表示に盛り込む必要があります。
住宅周辺の状況に応じ、災害時における宿泊者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、住宅宿泊事業者等が宿泊者に対して避難場所等に関する情報提供を行ってください。
[3] 消防法令との関係について
消防法令に基づき設備や防火管理体制等に関する規制を受ける場合や、市町村の火災予防条例に基づき防火対象物使用開始届出書の提出が必要となる場合があるため、当該規制の適用の有無等について、届出の前に建物の所在地を管轄する消防署等に確認する必要があります。
そのため、詳細については消防庁HPの「民泊における消防法令上の取扱い等」をご参照ください。
ここでは、「民泊における消防法令上の取扱い等」や「民泊における防火安全対策」について消防庁の作成しているリーフレットを中心にご説明いたします。
民泊に必要な消防設備は、戸建住宅で行う場合と共同住宅で行う場合で、消防法令上の用途が異なる場合があります。届出住宅が法令上のどの用途にあたるかによって必要となる設備が異なりますので、まずは、はじめる届出住宅が以下(1)~(4)のどの用途に該当するかを調べる必要があります。
(1)一般住宅
(2)5項イ(宿泊施設)
(3)5項ロ(共同住宅)
(4)16項イ(複合用途)

次に下表は、上表に従い届出住宅の用途が明らかになった場合に、各用途において消防法で求められる主な対応を整理したものです。既に設置されている消防用設備等については重複して設置する必要はありませんが、建物の規模や形状等によっては、他の対応が求められる場合や各自治体による条例等が定められている場合もあるので、詳細は建物の管轄消防署に確認する必要があります。

(補足)東京都自治体リスト(23区限定)
各自治体の条例・独自ルールの内容は、当該自治体に確認をするようにしてください。
|
千代田区 |
保健福祉部民泊指導課 事業係 |
〒102-8688 |
|
中央区 |
中央区保健所生活衛生課 生活衛生係 |
〒104-0044 |
|
港区 |
みなと保健所生活衛生課住宅宿泊事業担当 |
〒108-8315 |
|
新宿区 |
健康部衛生課環境衛生係 |
〒160-0022 |
|
文京区 |
アカデミー推進部アカデミー推進課観光担当 |
〒112-8555 |
|
台東区 |
台東保健所 生活衛生課住宅宿泊事業担当 |
〒110-0015 |
|
墨田区 |
墨田区保健所生活衛生課 生活環境係 |
〒130-8640 |
|
江東区 |
健康部(保健所)生活衛生課環境衛生係 |
〒135-0016 |
|
品川区 |
品川区保健所生活衛生課医薬環境衛生担当 |
〒140-8715 |
|
目黒区 |
健康推進部生活衛生課環境衛生係 |
〒153-8573 |
|
大田区 |
健康政策部生活衛生課 |
〒143-0015 |
|
世田谷区 |
世田谷保健所生活保健課環境衛生施設係 |
〒154-8504 |
|
渋谷区 |
健康推進部生活衛生課内コールセンター |
〒150-8010 |
|
中野区 |
健康福祉部生活衛生課 医薬環境衛生係 |
〒164-0001 |
|
杉並区 |
杉並保健所生活衛生課環境衛生担当 |
〒167-0051 |
|
豊島区 |
保健福祉部生活衛生課 |
〒170-0013 |
|
北区 |
北区保健所 生活衛生課環境衛生係 |
〒114-0001 |
|
荒川区 |
荒川区健康部(保健所)生活衛生課環境衛生係 |
〒116-8502 |
|
板橋区 |
板橋区保健所健康生きがい部生活衛生課 |
〒173-0014 |
|
練馬区 |
健康部生活衛生課環境衛生監視担当係 |
176-8501 |
|
足立区 |
衛生部足立保健所生活衛生課 |
〒120-0011 |
|
葛飾区 |
健康部生活衛生課環境衛生担当係 |
〒125-0062 |
|
江戸川区 |
健康部生活衛生課環境衛生係 |
〒133-0052 |